外壁材の選定
高槻市の1級建築士事務所 株式会社のびのび子ども住宅 九万田です。
今日は外壁材の選定についてお話したいと思います。
外観デザインですから、すっごく迷うところだと思いますし、なかなかイメージもしにくいことだとも思います。
外観デザインの考え方
外観デザインは悩むんだろうなーと思いますね。
図面やパース、模型といった様々なプレゼンテーションの資料をお渡しして、
そして、この部分はこの材料を使ってこの色を考えていますとお伝えしても、
実際に、お隣の家の雰囲気とのかかわりがわかりにくかったり、小さな色見本では実際の大きさになるとどうなるのだろう?というイメージがわかりにくさもあります。
パースや模型でもなかなか伝わりにくい部分になります。
外観デザインってどこからどうやって考えていくんでしょうかね??
外観デザインの考え方になりますが
どちらかというと、外観デザインを先に考えていくといったほうがいいでしょうか?
多くの方は平面計画を考えていくのですが、外観デザインをこのようにしていこうと決めてから、平面計画ができあがっていく感じです。
というのは、
これはプランニングの手順でもお話したことですが、
その土地に一番いい場所があって、それをどのように切り取るかが重要になってきます。
平面計画ばかり考えていると、隣家の窓や構造物が結果的に邪魔になった家になる可能性も出てきます。
その土地にあったプランニングを進めるということは、外観デザインをしっかりと決めてから、この位置に何を配置していくのか、
それに従って窓位置も確定してきますし、屋根の形状も決まってきます。
ですので
外観まずありき
極端に言えば、そのようになります。
実際に考えていくとしますが、
このブログにある画像は現在、高槻市で建て替えの設計をしている現場です。
(お施主様の了解を得て外観イメージパースをブログに掲載しています。ありがとうございます)
北側道路で、道路の先には大きな広場があり、その広場には大きな木がたくさんあります。
道路幅は8mあり、その道路はほとんど車が通らない住宅街であり、その先の広場も大きな木々があり手入れもされています。
北側ですが、借景として抜群。
逆に、東西と南は隣地が迫っており、借景として楽しむことはできそうもない敷地です。
では
この土地にどのように考えていくかとなると、北側の広場に対していかに広げていくかという外観を作り出したいと考えます。
そして極力、東西に長く、あわせて、建物全体を低く抑えたイメージで設計を進めていきます。
ただし、いろいろな条件が設計にはついてきますので、そのあたりを整理しなければなりません。
準防火地域の制約
準防火地域という言葉を聞いたことがありますでしょうか?
駅前などは店舗やビルが多くあるエリア、これらは火事が起きやすく、延焼して火事がどんどん広がっていく可能性が高いエリア。
よって、そういう場所は、防火地域に指定されている場合が多いです。
防火地域は木造住宅の建築も可能ですが、要件がかなりありますので、また今度。
逆に
指定なしのエリアがあります。
住宅ばかりが立ち並んでいて、建物も高さが抑えられているような地域です。
そういう場所は、防火に関する規定が少ないエリアで、法22条地域といわれます。
建築基準法の22条には、遠くで起きた火事の火の粉が飛んできて、新たに火事が発生する場合を防ぐためにどうするか?
といったことが書かれています。
簡単に言うと、屋根の指定です。
防火性能を兼ね備えた屋根にしなさいね、ということが書かれています。
そして、
防火地域と法22条地域の間にあるのが準防火地域。
防火地域ほど厳しくはないけれども、防火性能のある素材や建て方をしなさいよと決められている地域です。
先述の法22条地域と見た目同じような家を建てたとしても大きな金額差になってくるのがこの準防火地域の規制です。
特に
特にです、悩まされる、妥協せざるを得なくなるのが、
窓です。
そう、開口部(窓や玄関)に防火性能を持たせて、火事の拡大(延焼)を抑えるようにした建築をしなければならない、
この防火性能のある窓というのが厄介で、
防火性能のある窓は限られている、デザインが少ない、費用が高くなる。
という問題を抱えています。
やはり費用が一番やっかいです。
防火性能のある窓と、そうでない窓だと金額差は倍くらいあると思ってもらっていいでしょう。
その家1件に窓と玄関で200万円見積もりがあったとしたら、防火性能のある窓だと400万円になるということ。
見た目同じような家でも、そこで200万円の差が生じてしまうなんて、本当に悩まされます。
そのうえ、デザイン性が少なく、大きさも小さなものばかりになりますので、家全体のデザインに制約がでてきます。
さて
外観デザインのお話にもどりますが、
外観デザインを考えるときのポイントとして、既製品はできるだけ見えない部分に使うというのが私の考え。
窓や玄関扉はコストのことを考えて既製品を使います。
予算があるのであれば、木製扉でオーダーすることもありますが、多くのお客様がやりたいことが多くあるので、そこは結果的に脱落することが多いので
はじめから提案しません。
よって既製品、のびのび子ども住宅ではYKKのAPW330以上の窓を使いますが、できるだけ家の正面にはそういった既製品のデザインが出てこない提案を進めていきます。
既製品のごつごつとした感じをできるだけ排除し、すっきりとした線の少ないデザインを心がける。
家はシンプルに仕上げていけばいいのではないでしょうか。
しかし、防火性能のある窓がどうしても借景に必要な場合がでてきます。
まさに、今回の画像のような場合です。
高槻市はほぼほぼ、準防火地域。
今回設計している場所は一戸建てが立ち並ぶ場所ですが、それでも準防火地域。
準防火地域でコストがどんどんあがることを考えなければなりませんし、少ない手数の窓デザインのなかでデザイン性を考慮しなければなりません。
さて、デザインか?コストか?借景か?
その場合は借景を優先です。
家は豊かさを求めるものです。
そして規制の中でその豊かさをどう表現していくかです。
設計デザインのエゴではなく、そこに住まわれる方々が豊かな時間と空間を楽しんでもらうためのものでなければなりません。
コスト的に抑えられるシャッター付きの防火窓を今回は採用。
そのあとどのように工夫をしてくかを考えていく必要があります。
準防火地域でも使える木の外壁
窓の選択肢をシャッター付きにして、その既製品感が否めないことをどのようにカバーしてくのか?
このあたりが難しいことになっていきます。
もちろん、敷地が大きくあり、延焼しないように防火壁をつくるなど様々な方法が選択肢としてありますが、
そこに費用をかけていいかはお施主様の判断になりますが、今回はそのような費用を設けずに提案を進めていきました。
そして
結論として、準防火地域でも使える木の外観で採用。
ここ最近、素材メーカーさんが頑張っています。
外壁メーカーさんが頑張っていて、準防火地域でも使える木の材料を開発し、試験データーもとって、OKになってきました。
もう10年くらい?いやもっと前からあるかもしれません。
のびのび子ども住宅では、チャネルオリジナルの外壁材を使って、準防火地域の建物に外壁材を木にしたことがありますが、その建物ももうすぐ10年くらいになりますかね??
そして
今年になって断熱材のメーカーさん、のびのび子ども住宅で使っていますデコスセルロースファイバーですが、
デコスさんが、デコスセルロースファイバーと大建工業のダイライトMSを使った場合、外壁材に木を使えるようになったことが公発表ありました。
つまり、
普通に建てるやり方て、外観に木を使えるようになったということ。
チャネルオリジナルさんの外壁材もいいものなのですが、
やはり防火性能のある外壁材ということもあり、コストアップにつながってしまってました。
ちょっと割高なんです。
しかし、今回のデコスセルロースファイバーでいえば、木なんですよね。
手間暇はかかります。
その分、質感が本物になり、サッシの既製品の雰囲気を帳消しにしてくれるものになります。
また、コスト的にも結果的に抑えられたものになっていくと思われます。
これらの組み合わせで外観デザインをしっかり見せていくところとそうでないところを作っていく。
高槻市のお施主様も、木を外観にふんだんに使えることに喜んでもらえました。
外観の木は、チャネルオリジナルさんが進める屋久島地杉を予定して、断熱材はデコスセルロースファイバー。
メンテナンスのことを考えて、チャネルオリジナルさんの屋久島地杉はいいと思います。
また、
一部玄関が周りは、薩摩中霧島のそとん壁と、金属外壁の組み合わせで意匠的にご提案しています。
今日は外観デザインについてお話をしました。
設計者としてのこだわりとお施主様のご要望を兼ね備えていくこと、妥協でない細部がやはり大事ですよね。